転生したのに0レベル
〜チートがもらえなかったので、のんびり暮らします〜


115 本当ならみんな、大人になってからやるんだよ



 午後から森に出かけると言う事でちょっと早めにお昼ご飯。
 それを家族みんなで食べてから、僕とお兄ちゃんたち3人は森へお出かけする為に準備をすましてお家の前に集まったんだ。

「ルディーン、森に行くからって無駄な荷物は……あれ? 持って無いな」

 そこでディック兄ちゃんが僕に荷物の話をしようとしたんだけど、僕が剣と腰のポーチ以外何も持ってないのを見てびっくりした顔をしてるんだよね。

「てっきり大荷物を背負って来ると思ったんだけど、これは予想外だね。森に行く時の荷物の事、誰かに聞いたのか?」

「うん! お父さんが教えてくれたんだよ。ホントはねぇ、僕、いっぱい持ってくつもりでいろんな物を用意してたんだけど、全部いらないって取り上げられちゃったんだ」

 でも、流石に僕が自分で気が付いて荷物を持って来なかったなんて思わなかったみたい。

 だから荷物を少なくしなさいって誰から聞いたのかって聞かれたから、僕は素直にお父さんからだよって答えたんだ。

「ああ、なるほど。父さん、ルディーンいは甘いからなぁ」

 それを聞いたディック兄ちゃんはうんうんと頷きながら、そう言ったんだけど、

「いや、甘いからだけじゃないかもよ」

 テオドル兄ちゃんがそれを否定したんだよね。

 でも、それを聞いたディック兄ちゃんは納得できなかったみたいで、

「そうか? 俺の時はパーティーを組む以上は自分で前もって調べておくべきだし、それをせずに恥をかいたのは自分の責任だって言われたぞ。テオドル、お前だってそうだろ?」

 自分の時はこうだったって例を上げて、テオドル兄ちゃんの時も同じだろ? って聞いたんだ。

 へぇ、本当は自分でちゃんと調べないといけなかったのか。

 言われて見ると確かに、何も知らないで行ったりしたら周りに迷惑をかける事になるよね。それが初めて組む人相手だったら、そうならないようにって特に気をつけなきゃいけないってのは当たり前だ。

 それに初めてパーティーを組んだ時に何も知らないで恥をかいたら物凄く記憶に残ると思うんだ。

 そしたらそれからは絶対に同じ失敗をしないよね? だからお父さんは、お兄ちゃんたちに教えなかったんじゃないかなぁ?

 あっでも、だったらなんで僕には教えたんだろう?

「確かにそうだけど、ルディーンの場合は俺たちとはちょっと違うからなぁ」

 そう思ってたらテオドル兄ちゃんが何で僕だけ教えてもらえたのか、思い当たる事があるみたいな事を言い出したんだ。

「僕、お兄ちゃん達となんか違うの?」

「ああ。お前はまだ小さいのに、もう村の仕事を割り当てられてるからなぁ。だから前もって調べる余裕なんて無いだろうって、お父さんは考えたんじゃ無いか?」

 だからなんで? って聞いてみたんだけど、そしたら僕はまだ子供なのに村のお仕事をしてるからだって答えが帰って来たんだよね。

「なるほど。確かに俺やテオドルは、初めてパーティーを組んだころにはまだ村の仕事はやらされてなかったもんな」

「だろ。 本当なら成人しないと割り当てられないはずの村の仕事をさせられてるんだから、お父さんもルディーンの事を、ちょっとくらい甘やかしてもいいって考えたんだと思うよ」


 僕たちが住んでるグランリルはそれほど大きく無い村だから、みんなで色々なお仕事を分担して助け合って生活してるんだ。

 例えばイーノックカウのような大きな街に村近くの森で取れた物を売りに行ったり、近くの村に牛乳や村で作ってないものを買いに行ったりするのもそのお仕事のひとつだし、他にも村の周りの柵を見回って壊れた場所があったら治したり、魔物から取れた油からろうそくのような物を作ったり、お風呂場で使う石鹸を作ったりするのもその村の大人たちが分担してやるお仕事なんだよね。

 でもそんな村のお仕事って本当なら15歳になって成人しないと割り当てられないはずなのに、僕はお父さんやお母さん、それに村の人たちから頼まれて、もういろんなお仕事をやってるから今回はお父さんも前もって教えてくれたんだろうってお兄ちゃんたちは言ってるんだ。

 
「村じゃ誰も魔道具を作ったり治したりできないから、ルディーンがやれるようになるまではちょっとした故障でもイーノックカウまで運ばなきゃいけなかったって言うしなぁ。本当ならこんな小さなうちにやらされるのって簡単なお手伝いだけで、それさえきちんとやってるなら後は近所の子達と遊んでればいいはずなのに、みんなが困るからってやらされてるもんなぁ」

「それにお菓子類もな。雲のお菓子はルディーンが魔道具を改良したおかげで誰でも作れるようになったけど、あのぱんけーきとか言う奴、他の人が作るのとではまるで味が違うからって、もうすっかりルディーンお仕事だからなぁ。大人でもルディーンほどいろんな仕事をしてる人、いないんじゃ無いか?」

 そうなんだよね。なんでか僕だけ、いっぱいお仕事が回って来るんだ。

 それにお兄ちゃんたちは関係ないから知らないのかもしれないけど、これとは別にお肌つるつるポーションと髪の毛つやつやポーションも作んなきゃいけないんだよね。

 この頃はある程度みんなに行き渡ったから前ほど作んなくても良くなってるけど、それでも僕しか作れないんだからお仕事には変わり無い。

「それにルディーンはまだ小さいしね。俺やディック兄ちゃんが初めて森に連れて行ってもらえたのは10歳の時だし、お父さん達以外とパーティーを組んで森に出かけてもいいって言われたのは、もっとずっと後だったからなぁ。それなのに8歳になったばかりのルディーンを同じ扱いにするのは、流石に可哀想だと思うよ」

「そう言えばそうだな」

 テオドル兄ちゃんの話に、ディック兄ちゃんはうんうんと頷きながら納得する。自分達の時はもっと大きかったんだから、今の僕に同じ事をしろって言っても無理だろうってね。

 そんなお兄ちゃんたちは、二人して僕の方に目を向けると、

「草原での狩りだと俺たちよりいっぱい獲物を狩ってくるけど、ルディーンはまだこんなちびっ子なんだよなぁ」

「そうそう。まだ小さいんだから、家族みんなでが助けてやらないとな」

 そう言って僕の頭を代わる代わる撫でてくれたんだ。


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